しょぼんブログ

数学の色々とか様々とか

平行移動のやり方+円の接線の方程式

問題:
(1)
 x^2+y^2=25 (1, 6) から引いた接線の接点を求めよ
(2)
 (x-4)^2+(y-3)^2=25 (5, 9) から引いた接線の接点を求めよ

2019/12/25 一部訂正しました

円の接線の方程式

 円 x^2+y^2=r^2上の点 P(x_1, y_1)における接線の方程式は
  x_1x+y_1y=r^2
というのを使ってみるといいかもしれない。
このとき, 点 Pは接点になるはずだから, だいぶ楽になると思う。
さて、教科書に載ってるのでテストではこれを証明しなくていいのですが
後に繋げるために, これを証明します.
考え方としては, 円の接線は, 円の中心から接点に引いた直線と垂直であることを利用します
これにあたって, 傾きの公式を使います. 数学は0で割ることはできないので, 計算途中で分かるのですが
最初に x_1\neq0 かつ y_1\neq0 とします(後ほどその場合も証明します)

[I]  x_1\neq0 かつ y_1\neq0 のとき,
原点を O, 接点を P(x_1,y_1)とします
このとき OPの方程式は
傾きが \frac{y_1}{x_1}であるので
 y=\dfrac{y_1}{x_1}x となります.
これに垂直な方程式の傾きを mとすれば
 \dfrac{y_1}{x_1}m=-1 よって,
 m=-\dfrac{x_1}{y_1}
(ここでは垂直な方程式の傾きの公式の証明は省略したいと思います)
よって, 垂直な方程式は P(x_1,y_1)を通るので
 y-y_1=-\dfrac{x_1}{y_1}(x-x_1)
(点 (x_1,y_1)を通る直線は, 傾きを mとすると, y-y_1=x(x-x_1)
この両辺に y_1をかけて変形すると
 y_1(y-y_1)+x_1(x-x_1)=0
展開して移項すると
 x_1x+y_1y={x_1}^2+{y_1}^2
ここで,  P(x_1,y_1)は円周上の点であるので
 {x_1}^2+{y_1}^2=r^2が成り立ちます
よって,
 x_1x+y_1y=r^2

[II]  x_1=0 かつ y_1\neq0 のとき
 x_1x+y_1y=r^2 x_1=0を代入して
 y_1y=r^2 これは,  y=\dfrac{r^2}{y_1} と変形できる
 y_1は,  {x_1}^2+{y_1}^2=r^2より
 {y_1}^2=r^2 すなわち  y_1rまたは -rのいずれかしか取らないため,
それぞれ同様に確かめれば x_1x+y_1y=r^2が[II]でも成り立つことがわかります

[III]  x_1\neq0 かつ  y_1=0 のとき
[II]と同様に成り立つ

[IV]  x_1=0 かつ  y_1=0 のとき
こんなときは {x_1}^2+{y_1}^2=r^2が成り立つので
 0=r^2 が成り立ちます. だから, 左辺も右辺も 0になって成立

したがって,  x_1x+y_1y=r^2が成立する

平行移動の重要な考え方

わかりやすいために,  y=f(x)という関数を考えます.
ちなみに,
関数 f(x) xによってただ1つの f(x)を返すので, 方程式とは違うものです。
しかし,  y=f(x) は解くことができるから方程式です。方程式の中に関数 f(x)が入ってるのです。

 y=f(x)を満たす点 (x,y)を考える
 (x,y) x軸方向に p,  y軸方向に q平行移動したとして,
平行移動後の座標を (X,Y)とします
このとき,  X=x+p, Y=y+q
 x=X-p, y=Y-qが成り立ちます.
よって,  (x,y) (X-p, Y-q) で表されるのです
求めたいのは,  X,Y p,qのみの式になるので、これでいいでしょう。
つまり,  x x-p,  y y-qに置き換えれば

 y=f(x) x軸方向に p,  y軸方向に q平行移動したものは,
 y-q=f(x-p)
となります.

(例1) y=x^2 x軸方向に p,  y軸方向に q平行移動すると y-q=(x-p)^2です!
移行後の y=(x-p)^2+qは平方完成されているので見覚えがあるのではないでしょうか?
 y=x^2の頂点の座標は (0,0)になるので,  y=(x-p)^2+qの頂点の座標は (p,q)となります.
(例2) y=mx x軸方向に p,  y軸方向に q平行移動すると y-q=m(x-p)です!
さっきの証明でも使ってます.そうすると、あの公式は点 (p,q)を通るときたまたま成立するんじゃなくて、無理やり比例のグラフから平行移動して, もってきてるだけなんですね!
(例3) y=\sin{x} x軸方向に p,  y軸方向に q平行移動すると y-q=\sin{(x-p)}です!
三角関数です。間違えやすいです。
(例4) y=\dfrac{1}{x} x軸方向に p,  y軸方向に q平行移動すると y-q=\dfrac{1}{x-p}です!
数Ⅲの関数であります。
(例5) x^2+y^2=r^2 x軸方向に p,  y軸方向に q平行移動すると (x-p)^2+(y-q)^2=r^2です!
円もいけます。  x^2+y^2=r^2の円の中心が (0,0) なので (x-p)^2+(y-q)^2=r^2の円の中心は (p,q)になります
(例6) y=|x| x軸方向に p,  y軸方向に q平行移動すると y-q=|x-p|です!
さすがに絶対値はヤバいだろ…って思いますが、大丈夫です。さっきの説明を理解すればどんな方程式でも成り立つことがわかります

と、このように視野が広くなるのでおすすめです
かなりわかりやすい解説をしてくれてるサイトがあったので紹介します
ネット上で一番わかりやすいので参考にしてほしいです
最後に注意点もあります。
 y=(2x-5)^2はどういう関数かというと,
 y=4\left(x-\dfrac{5}{2}\right)^2となるから
 y=4x^2x軸方向に\dfrac{5}{2}平行移動したものです
決して,  y= 4x^2x軸方向に 5じゃないです
 xの係数は 1にする必要があります。以下のサイトが詳しいです
examist.jp

問題の解答

(1)
接点を (s,t)とおく
接線の方程式は  sx+ty=25 .
これが (1,6)を通るから
 s+6t=25…①
また,  (s,t)は円 x^2+y^2=25上にあるから
 s^2+t^2=25…② が成り立つので,
①を変形した  s= -6t+25 を②に代入して
 (-6t+25)^2+t^2=25
 36t^2-300t+625+t^2=25
すなわち
 37t^2-300t+600=0
よって
 t=\dfrac{150\pm\sqrt{300}}{37}
 t=\dfrac{150}{37} \pm \dfrac{10\sqrt{3}}{37}
①に  t=\dfrac{150}{37} \pm \dfrac{10\sqrt{3}}{37}を入れてあとは終了です
 t=\dfrac{150}{37} + \dfrac{10\sqrt{3}}{37} のとき,
 s=-\dfrac{900}{37} - \dfrac{60\sqrt{3}}{37} + \dfrac{925}{37}
 = \dfrac{25}{37} -\dfrac{60\sqrt{3}}{37}
 t=\dfrac{150}{37} - \dfrac{10\sqrt{3}}{37} のとき,
 s=-\dfrac{900}{37} + \dfrac{60\sqrt{3}}{37} + \dfrac{925}{37}
 = \dfrac{25}{37} +\dfrac{60\sqrt{3}}{37}

すなわち,  (s,t)は,
 (\dfrac{25}{37} +\dfrac{60\sqrt{3}}{37},\dfrac{150}{37} - \dfrac{10\sqrt{3}}{37}),
 (\dfrac{25}{37} -\dfrac{60\sqrt{3}}{37},\dfrac{150}{37} + \dfrac{10\sqrt{3}}{37})

(2)
 (x-4)^2+(y-3)^2=25 で計算するのは大変
というわけで、平行移動することにします
具体的には,  (x-4)^2+(y-3)^2=25の中心は (4,3)だから
 x軸に -4,  y軸に -3 平行移動すれば,
 x^2+y^2=25となります.
同じく,  (5,9)
 x軸に -4,  y軸に -3 平行移動すれば,
 (1, 6) です
この,  x^2+y^2=25 (1, 6)から引いたときの接点の座標は, (1)で求めましたので
 (\dfrac{25}{37} +\dfrac{60\sqrt{3}}{37},\dfrac{150}{37} - \dfrac{10\sqrt{3}}{37}),
 (\dfrac{25}{37} -\dfrac{60\sqrt{3}}{37},\dfrac{150}{37} + \dfrac{10\sqrt{3}}{37})
とわかります.
これをもとに戻すには,
 x軸に 4,  y軸に 3 平行移動すればいい
ので
 (\dfrac{173}{37} +\dfrac{60\sqrt{3}}{37},\dfrac{261}{37} - \dfrac{10\sqrt{3}}{37}),
 (\dfrac{173}{37} -\dfrac{60\sqrt{3}}{37},\dfrac{261}{37} + \dfrac{10\sqrt{3}}{37})
これが答えになります

つまり, 原点以外を中心とする円に、その円周上でない点から接線を引くときの接点は,
最初から平行移動を使って計算して、最後に戻してあげれば、かなり計算を短縮できるということです.
しかし、以下の方程式を使うやり方もあります.

接線の方程式は如何

平行移動の考え方を使って(2)を解きましたが、接線の方程式を求めるのはやや苦労します
ここで,  x_1x+y_1y=r^2を用いて導いてみましょう.
ここで, 点P (x_2, y_2)が, (x-p)^2+(y-q)^2=r^2の円周上にあるとします
まず, 平行移動します. 円の中心を原点にしたいので,
 x軸に -p,  y軸に -qだけ平行移動します
もちろん後で戻します.
このとき
点Q (x_2-p,y_2-q) x^2+y^2=r^2の円周上にあるという感じになります.
これを x_1x+y_1y=r^2に代入して
 (x_2-p)x+(y_2-q)y=r^2 となります.
ここで,  x軸に p,  y軸に qだけ平行移動します
そうして
 (x_2-p)(x-p)+(y_2-q)(y-q)=r^2 が導きます.
(この場合、0関連の証明は不要です)

最後に, 公式を見やすくします.  x_2 x_1の文字に置き換えて整理するとこうなる

  (p,q)を中心とする円 (x-p)^2+(y-q)^2=r^2上の点 (x_1, y_1)における接線は
  (x_1-p)(x-p)+(y_1-q)(y-q)=r^2

この公式は非常に便利で, これがあると計算量が大きく削減されるような問題がたくさんあります